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いしいしんじ著 『トリツカレ男』
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ジョゼッペはみんなからトリツカレ男ってあだ名で呼ばれてる。
一度何かにとりつかれちゃうと、もう、ほかのことにはいっさい気がむかなくって、
またそのとりつかれかたが、そう、ちょっと普通じゃないんだな。


このヘンテコな一文を読むだけで、「ぬぬぬ?!」と、その世界に惹き込まれてしまう。

ジョゼッペは何かに夢中になると、寝ても覚めてもそればかり。オペラ、三段跳び、サングラス集め、潮干狩り、刺繍、ハツカネズミetc.そんな彼が、寒い国からやってきた風船売りに恋をした。彼女にすっかりとりつかれたもんだから、彼女のこころのくすみが見えちゃうのだ。そしてそのくすみを消し去ることにとりつかれてしまう。

私の知人に、このトリツカレ男のジョゼっぺにそっくりな「トリツカレ少年M」がいる。
彼はいたってマイペース、例えば鳥や昆虫の学名だったり、クラッシック音楽だったり、お琴だったり、シルバニアファミリーやレゴブロックにもトリツカレてた。
知らない人はそのトリツカレ方に少々驚くが、本人もお母さんも周りの人達も、
このトリツカレ少年を見守り尊敬していて、彼はジョゼッペと同じくとっても人気者なのだ。

この作品の中に登場するハツカネズミが

「なにかに本気でとりつかれるってことはさ、みんなが考えてるほど、
ばかげたことじゃないと思うよ」

ジョゼッペ:「そうかい?」

ハツカネズミ:「そりゃもちろん、だいたいが時間のむだ、物笑いのたね、役立たずの
ごみでおわっちまうだろうけど、でも、きみが本気をつづけるなら、いずれなにかちょっとしたことで、むくわれることはあるんだと思う。」


などと、いかしたセリフを言う何気ないシーンがあって、
何だかジーンとして勇気がわいて来る。
この本の中には大筋よりも、一文でノックアウトされちゃう魅力がある。
他にも「氷の上で守る3つの約束」など。
小説でも童話でも絵本でもなくて、そのどれでも当てはまる。

トリツカレ少年Mにもこんなハツカネズミがそばに居たらいいのになぁ、
そしてペチカが表れたらもっといいのになぁ
と、思ってしまった。

今度、彼にこの本をお薦めしてみよう。



トリツカレ男
いしい しんじ / 新潮社
by kohakuza | 2006-08-02 01:32 | Books


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