『パンズ・ラビリンス』 El Laberinto del Fauno
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ダークファンタジーは大好きな私、これは見逃せないなと久々に映画館へ滑り込み
ようやく観れました、『パンズ・ラビリンス』
何となくジム・ヘンソンの「ラビリンス 魔王の迷宮 」なんかを想像してましたが
そこはスペインとメキシコの合作だけあって、ただのファンタジー物では無かった。

1944年スペイン内戦終結後、フランコ独裁政権下の歴史的な背景や
戦争を取り巻く、少女の家族の人物像もしっかり描かれていて、
主人公のオフィリアの心の中では「ファンタジー=夢の世界」ではなく
「ファンタジー=現実からの解離」つまり、辛い体験から空想によって逃れられる世界観を
描いているように思え、最後の場面に関わらず胸がギュッと掴まれる
訳も無く悲しい場面も多かった。

父親の戦死、母の再婚、再婚相手の大尉は冷血なファシスト。
そして身重の母親と向かった先は、鬱蒼とした森の奥の基地。
こんな逃げ場の無い世界の中へ連れて行かれたら?
誰だって、本の中へ、おとぎの国へ、苦痛の無い世界への
鍵が欲しいのは当たり前。
彼女はあまり信用できそうにないパン(牧神)の言う事を聞き、3つの試練に立ち向かう。
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それにしても、登場人物がどの人も興味深かった。
特に再婚相手の大尉はヒトラーを思わせる残忍さだが、自分の父親に「死の時刻」を
手渡された事によって植え付けられた、死への恐怖の裏返しに
自分の息子を生ます事「血を繋げる事」に異常に執着している。
ナイフで刺されても、口を裂かれても自ら縫合し、追いかけてくる悪魔的なパワーは
グロテスクなシーンよりも、ずっと象徴的で恐ろしい。
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オフィリアの母親とメルセデス、対照的な女性としての描かれ方も
この二人の大人の女性のどちらの要素も、オフィリアが備えているようにも思える。
メルセデスとゲリラに密かに味方する医師は、大尉の命令に背く事によって
死を選ぶ事になるのだが、彼の死は又違う意味を持ってるようにも思えた。

戦争や恐怖からの脱出が、もたらす物は「苦痛の無い世界」なのか?
それとも、死によって得られる開放感だけなのか?

恐ろしい世界から、チョークで描かれたドアを開けば
美しく輝くおとぎの国の世界。
しかし2つの世界は必ず背中合わせに存在してる。
見終わった後、ジワジワと心の中に染み入るような不思議で
切なく美しい映画でした。
音楽の余韻も残る。

『パンズ・ラビリンス』 El Laberinto del Fauno
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by kohakuza | 2007-10-26 01:01 | cinema


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